鼻吸いは大切な治療法です
鼻水がでる2つの理由
風邪を引いた時や寒い外にいる時に鼻水ですが、皆さんはなぜ鼻水が出るかご存知ですか? 鼻水には2つの機能が備わっていると言われています。
鼻水が持つ2つの役割
1. 外からの異物を体内に入れないための機能
わかりやすい例で言うと、風邪をひいた時に出る鼻水は、この機能が働いていると考えられます。
外から入ってくる細菌やウイルスなどの異物を感知すると、脳は鼻水を出して洗い流そうと指示します。
そうして分泌された鼻水は異物を吸着し、体外に押し流します。
通常鼻水の色は透明ですが、体内に侵入した異物(細菌・ウイルス)が免疫機能によって破壊されると、白~黄色っぽい鼻水に変化し、ねばねばしたタイプの鼻水になります。
細菌やウイルスが増えると黄~緑っぽい色になり、鼻の粘膜が赤く腫れるようになります。
2. 体内に入る空気・湿度の調整機能
外の気温と体内の温度では差があります。この差を調整するための機能が鼻水にはあると考えられています。
例えば熱風を直に鼻から吸い込んでしまうと、気道がやけどを負ってしまう可能性があります。そのため鼻を空気が通る間に、鼻水で体温に近い温度に調整し、体内に取り込んでいます。
また、冬の冷たく乾燥した空気に対しても同じく、鼻水で体温に近い温度に調整し、適度な湿度を与えていると考えられています。
どうして耳鼻咽喉科では鼻の吸引をするのですか?
耳鼻科で行う鼻吸いには、鼻づまりの不快感を取り除くこと以上に大切な意味があるのです。
それは、『体外に病気の素を追い出し、治りを早める』ことです。
鼻水には細かなゴミ(ハウスダスト等アレルギーの素になるもの)や花粉、細菌やウイルスなど様々な物質を持っています。
それらの鼻水を排出せずにずっと鼻の中に留めておくと、中耳炎や副鼻腔炎の原因になります。
特にお子さま(乳幼児~4歳くらいまで)は鼻を上手くかめない場合があり、ずっと汚い鼻水が残り続けていることがあります。そうなると、繰り返し中耳炎になる反復性中耳炎になったり、慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)になったりしてしまう可能性があります。
また、粘り気のある鼻水の場合、後鼻漏といい右の図のように鼻の奥から喉に落ちることがあります。
後鼻漏になると、のどのイガイガ感やせきが長く残る症状が出ます。
そうした理由から、耳鼻咽喉科で定期的に鼻水を吸引していただくことで、風邪などの治りが早くなったり、必要以上の薬を服用しなくてもよくなったりすることがあります。
当院の鼻吸いの秘訣、それは吸引管の使い分け!
当院では、お子さまでも痛がらずに吸引ができるよう、シリコン製の細長い吸引管(アマツ式吸引管)を使用しております。
この吸引管は、先が柔らかいシリコン製で出来ており、小さなお子さまでも鼻の内を傷つけることなく、しっかりと鼻水を吸い取ることができます。
また、管が細長い作りなので、鼻の奥まで十分に吸引することができます。
アマツ式吸引管以外にも、オリーブ管・カザマ式吸引管・金属製吸引管を用意しております。
患者様のご容態や年齢に応じて、吸引管を使い分けることで鼻水を鼻に残しません。
オリーブ管
これは、オリーブ管という器具です。先の近くが膨らんでいるため、鼻の奥まで挿入しないタイプの吸引化です。
鼻の奥に入れないため、主に鼻の粘膜が傷つきやすい子ども(乳幼児~未就学児)の患者さんの吸引に使います。
また、先の膨らんでいる部分はガラスで出来ているので、鼻水の色を確認しやすいというメリットがあります。
カザマ式吸引管・アマツ式吸引管
カザマ式吸引管とアマツ式吸引管は、先が柔らかいシリコン素材で出来ているため、鼻の粘膜が弱い人やお子さんの鼻の吸引に使用します。オリーブ吸引管や金属製吸引管より先が細長いため、奥の方に残っている鼻水も吸い出せるようになっています。
透明な部分はシリコンという柔らかい素材で出来ているため、鼻の粘膜を傷つける可能性が低いです。 子ども(乳幼児~未就学児)の患者さんの吸引に使うことが多いです。子どもの患者さんは、もともと鼻の粘膜が柔らかく傷つきやすい上に、吸引を嫌がり暴れると金属製の吸引器では鼻の奥を傷つけてしまうこともあるためです。
にしあらい耳鼻咽喉科では
小さいお子さんの鼻吸いをする時は「オリーブ吸引管」に加え、「カザマ式吸引管」や「アマツ式吸引管」を使い、より奥の鼻汁まで吸い取ることが重要です。お薬が残っていても、鼻の吸引処置だけしにクリニックへ来ていただいても構いません。菌やウイルスが付着した鼻水を、鼻の中に残しておくことの方が良くありません。
金属製吸引管
これは金属製吸引管です。先が細長いので、奥にある鼻水も吸引することができます。小学生~大人の患者さんに使用します。
鼻づまりや不快な鼻水が取り除かれると、寝つきが良くなる・不快感がなくなるなどから、小さいお子さまもすっきりとした表情をされます。
しっかりと鼻の通りが良くなった状態になってお帰りいただくことが、お子さまご本人にとっても保護者の方にとっても大事だと考えておりますので、当院では鼻吸い(鼻の吸引)をさせていただいております。
お家での鼻水ケア
鼻水が多い時は是非耳鼻咽喉科に来院し、鼻水の吸引をしていただきたいのですが、「風邪をひいていてすぐにはいけない」「諸々の用事と都合が付かず、時間的に病院に行けない」という場合もあると思います。 しかし子どもの鼻水が溜まり続けると、中耳炎などの別の病気へ移行してしまうことがあるので、お家でのケアが必要になります。 お家でのケアとは、保護者の方が定期的に鼻をかんであげたり、市販の鼻水吸引器を使用して鼻水を吸い出していただいたりすることを推奨しています。
上手く鼻がかめないお子さんのためにお鼻をかむ練習をご紹介します。
※鼻水がでていない普段時でのトレーニングです。鼻水が既に出てしまっている時は、耳鼻科での吸引をおすすめします。
- ①お風呂場での練習が行いやすいです。お風呂場は適度な湿度が保たれているからです。
- ②口から息を吸ったら、口を閉じる。保護者の方は、お子さんの口が閉じているか確認してください。
- ③片方の鼻の穴を抑えて塞ぐ。
- ④「フン」と鼻息を出していただく。この時、もう片方の鼻や口から空気が漏れていてはいけません。
市販の吸引器は最初、上手く吸い出せないと思いますので、耳鼻咽喉科の先生がどのように鼻吸いをしているか見ていただいてからの方がスムーズです。
また、当院で配布しております『鼻処置リーフレット』も、ぜひご参考にしてください。
それでも、一番確実なのは耳鼻科で鼻の吸引をしてもらうことです。
特に頑固な鼻づまりがある時は、
① 鼻の中の炎症がひどくなり、鼻の中が狭くなっているパターン
② 固まった鼻水が鼻の奥で引っ付いているパターン
が考えられます。
市販の吸引器や通常の鼻かみで上手く鼻水が取れない場合は、耳鼻科へご来院いただき、鼻の吸引をしていただければと思います。